文房四宝


書道や水墨画で使う、筆、墨、硯、紙などの道具は、「文房四宝」と呼ばれています。

ここでは、私が水墨画を描くときに使う文房四宝の一部を紹介します。

長流


水墨画用の筆は、「長流」といい、普通の書道の筆よりも筆筒に入っている毛の部分が長いので、水をよく含んでくれます。普段は、「得応軒」や「実栄堂」の大筆を使っていますが、雪景色のように片方を薄くぼかして広い面を描くときなどは、筆を何本かつないである連筆を使うこともあります。

絵の中に文字を書き入れる時には、超長鋒という穂先がとても長い筆や稲藁の穂で自作した筆を使ったりもします。これらの筆は、とても扱いにくく、思ったように字が描けません。でも、そこがまた楽しいところなのです。

松煙墨・油煙墨


細かい模様のある無名の墨は、墨色がいいので、もうすぐ2本目も無くなってしまいそうです。この墨は、神戸市の「実栄堂」で購入していたものですが、もう、手に入らないのでとても残念です。

ほかに「妙法真一」「画禅室」などの銘がついた主に古墨の松煙墨も使います。松煙墨は、古くなるほど軽くなり、青みや味わいが出ると言われています。少し茶色味の出る油煙墨では、「下邳之土橋」という墨を使っています。墨によって微妙に発色が違いますので、絵の雰囲気によって使い分けています。

端渓硯・歙州硯


水墨画の作品を仕上げる時には、上部に花と鳥の絵柄が入った端渓硯を使っています。端渓硯は、キメが非常に細かくて磨墨、発墨が良い硯石です。

普段の練習時に使うのは、石質が硬い歙州(きゅうじゅう)石の古硯(縦 約12cm、横 約8cm)で、「剛不拒墨相著則黒金屑斑々歙之古石 暁嵐銘」とあります。「暁嵐」としましたが、実物をよく見ると「嵐」の「風」の部分が「夙」です。これは、中国・清朝の四庫全書を編纂した「紀暁嵐(きぎょうらん)」さんの名前を真似た少し怪しい硯石だと思います。でも、金色の星のような模様が点々と入っているので、自分で「銀河」と名付けて使っています。

もう一つは、縦横10cm四方の硯石。この硯は、明の時代の老坑端渓古硯らしく「方田毎々以藝径史淮石磷々以佐龍賓明鼓吹送為文瑞 柘庵」という銘が入っています。この硯石は、手紙を書く時などに使っています。

とはいえ、この二つの硯がずっと昔から、何人かの手を経て、はるばる中国から日本にやってきたことだけは確かです。そんな長い旅路を想像するだけでも楽しくなってきませんか?

紅星牌棉料単宣


私がよく使う画仙紙は、中国の「紅星牌棉料単宣」です。

「棉料」は、稲藁の含有量が多くて、きめが細かく、美しいにじみを出すことが出来ます。

「単宣」は、紙を一回だけ漉いているので薄いです。紙が薄ければ、墨が紙の裏まで届きやすいので、切れ味を表現しやすくなります。また、墨の吸い込みが弱くなりますので、筆の動きが軽くなります。

絵に応じて、少し厚い棉料夾宣を使うこともあります。紙が厚ければ厚い程、墨が紙に深く浸透し力強さを表現できます。ただ、あまり厚いと表装をする時にシワが寄ることがあるので要注意です。