辰馬守拙

48歳の時に癌により胃全部と周辺のリンパ節4分の3および脾臓を摘出。以前に胆嚢も摘出していたので、「五臓六腑」ならぬ「四臓四腑」の身となりました。

こんな身体で生きていけるのかと、傷心の日々を送っていた時に、ふと目にした水墨画教室の案内。それがわたしと水墨画との出会いを導いてくれました。「人間万事塞翁が馬」とはよく言ったもので、逆境の後に、幸運が待ち受けていることもあります。小川華瓣先生が筆を揮われると、筆の先から風がそよぎ、雲が湧き出でるような不思議な感覚を覚えました。

中国の有名な水墨画の書「芥子園画伝」にある画人謝赫の『気韻生動』という言葉。しかし、言葉としてではなく、先生が実作される姿とその作品の中にこそ、私は本当の『気韻生動』を見たのです。その『気韻生動』を自分もいつか、手に入れたいとの思いが、術後のフラフラした体と心を生き返らせてくれました。以来、二十年、自分の分身としての河童を描き続けています。

アートレス・アート


余白の美は、シンプルかつ繊細そして控えめ。描かれていない絵画こそ真の芸術。

現れていないものたちがこの世界を形づくってきたのです。姿のない風が季節をもたらし、見えない空気が命を守ります。目には見えない彼の心がその性格を形成し、さだかでない彼女の心がその顔かたちをつくります。

真実は、描かれませんが、むしろ、余白の部分に現れるのです。無色透明な水とたった一本の墨によって創出される水墨画の世界。白い画仙紙の中に、あらゆる色彩が包含されているのです。

あなたは、「河童」を信じますか?「河童」は、目には見えませんが、私の心の中に確かに存在します。もしも、あなたが見えない心の奥底をみつめるならば、きっと、あなたの可愛い「河童」を発見することでしょう。

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